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【セミファイナル 現地レポート】負けたという経験をプラスに

2021年3月12日

「第96回天皇杯 全日本バスケットボール選手権大会 ファイナルラウンド (以下、天皇杯)」は準決勝の 2 試合を終え、今年度のファイナリストが決まった。

 先に決勝戦へ勝ち上がったのは宇都宮ブレックス。強度の高いディフェンスを40分間遂行し、今シーズンの B.LEAGUE で 4 位の平均83得点、ファイナルラウンドに出場した 4 チームに限れば 2 番目に多いアルバルク東京を54点に抑えこんだ。アルバルク東京からすれば、大会が異なるとはいえ、平均得点から30点ちかくも抑え込まれると苦しい。
 しかも、3 次ラウンドでサンロッカーズ渋谷をブザービーターで下した張本人、エースの田中大貴がケガのため戦線を離れている。彼の代役というわけではないが、そのポジションを任されたのは22歳の小酒部泰暉だった。むろん彼にもそれだけの実力が備わっているからこそのスターター起用だが、結論から言えば、彼は21分44秒の出場で 5 得点しかあげられていない。
 試合後、小酒部は自身の出来について、こう言及している。
「普段の試合だったらそんなに緊張しないのですが、こういう大きい舞台で少し硬くなっているなと自分でも思っていました。ハーフタイムにルカ (パヴィチェヴィッチ) ヘッドコーチから『いつもより思い切りがない。ミスを気にせずアグレッシブに、いつもどおりやってくれ』と声を掛けてもらって、気持ちを切り替えるというか、前半の思いをなくそうという気持ちで後半は取り組めました」
彼の全 5 得点は第 3 クォーターにあげられたものである。そこにわずかな手応えを感じながら、それだけに前半の緊張、硬さが悔やまれるということだろう。
 今シーズンの B.LEAGUE ではスタータ起用されることもある小酒部だが、一発勝負の天皇杯でのそれは初めてである。
「独特な雰囲気がやりづらいところはありました。若い選手は大きい舞台でそういうことがよくあると言われますが、そこは早めにアジャストしなければいけないところだなと思っています」

 第 2 試合から決勝戦に勝ち上がってきたのは川崎ブレイブサンダース。2 年連続でのファイナル進出である。彼らもまたディフェンスに定評がある。同じく今シーズンの B.LEAGUE で平均83.8得点の 3 位、ファイナルラウンドに限れば得点力ナンバーワンのシーホース三河を67点に抑えている。
 その三河もチャンスがなかったわけではない。もちろん序盤から川崎のジョーダン・ヒースに 3 ポイントシュートを次々に決められるなど苦しい展開ではあった。我慢の時間帯のほうが長く続いたのだが、最大で19点のビハインドを背負いながら、残り 4 分20秒で 6 点差にまで追い上げている。ただ、次の一歩が出なかった。
「正直、僕がイージーなターンオーバーをしてしまったので、そこで流れを止めてしまったところはあります」
そう振り返るのは今シーズンから三河に移籍してきたシェーファーアヴィ幸樹である。
「チームとしてディフェンスを辛抱強くやって、ターンオーバーも 3 連続くらい奪ったところがあって、そこで流れをつかめるはずだったんです。でもそこで僕がミスしたこともあって、よいディフェンスをオフェンスにつなげられなかった……流れをつかめたようでつかめていませんでした」
 シェーファーは20分28秒の出場で 7 得点・4 リバウンド。そして 3 つのターンオーバー。23歳のシェーファーだが、天皇杯に関して言えば 3 年連続でセミファイナルまで勝ち進んでいる。2 年前はほとんどコートに立つことはなかったがアルバルク東京の一員として、昨年は滋賀レイクスターズのバックアップとしてセミファイナルを戦っている。そして今大会は三河のスターターとして挑み、またも敗れている。
 僕にはまだ勝負強さが足りない。そう言ったシェーファーだが、下ばかりを向いているわけではない。聡明な彼はそのこともわかっている。
「なんでも経験はプラスにしていかなければいけないと思っています。ただただ負けたのではなく、この試合から何かを学んでいく。特にこういう一発勝負の準決勝で負けたことは、いつもより一つひとつの判断に細かさや正しさが求められると思うので、そのあたりはこの試合で学ばなければいけません」

 敗れはしたが、リーグ戦とは異なる緊張感のなかで敗れたからこそ見つかる何かもある。若い選手であればなおさら、はっきりと見えただろう。小酒部も、シェーファーも若い。知識も経験も未熟だが、彼らには時間がある。負けた経験をプラスにするかどうかは、彼らの時間のなかにある。

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